~学習支援ボランティアさんの声~

『出会いの意味 ―つくば学習会に参加して―』

  筑波大学大学院卒 現 生協職員
  佐々木めぐみさん

◆なぜ参加をしたのか

 つくば市役所職員の友人の紹介で、茨城県のこどもの貧困の現状を知るための講演会に参加したことがきっかけです。それまで私は、国際的な食糧問題に関心があったことから大学で農学を専攻していましたが、恥ずかしながら国内の貧困の問題に目を向けたことはありませんでした。

 講演会の中で現代日本のこどもの貧困の現状がいかに深刻であるかをお聞きし、そういうこども達がごく身近な市内にいること、手をのばせば届く範囲で生活をしていることを知り、自分にも何かできることがあるのであれば、何もせずにはいられないという思いになりました。
 その講演会で居場所サポートクラブロベさんの活動のご紹介もあり、ちょうど低所得世帯のこども達のために無料塾(つくば学習会)を始められたということでした。

 そこで、少しでもお手伝いできることがあればと思い、参加させて頂くことになりました。

◆参加をして感じたこと

 つくば学習会の時間は、私にとって宝物の時間でした。
人懐っこくて天真爛漫な子達が多く、一緒に勉強したり遊んだりしながら、仲良くなっていけることがとても嬉しかったです。お菓子やおにぎりを好き嫌い言わず喜んで完食する姿や、「塾に行くのが憧れだった」という発言に愛おしさを感じると共に、その背景にある家庭の事情も垣間見える気がして、複雑な思いになりました。

 私がお手伝いさせていただいたのはほんの4ヶ月程度だったため、もちろんこども達に何か良い影響を与えたり、学習会の活動に貢献したりできたわけではありません。むしろ私がこども達から元気をもらっていた位でした。「それでは自己満足ではないか」と指摘されるかもしれませんが、それとも少し違うように私は思っています。

 茨城県内のこども食堂のスタッフの方のお言葉が印象に残っています。

 ―こども達が自分の家族以外にも、いろんな大人に出会うことが、とても大切。いろんな性格の人、いろんな職業の人を見ながら成長することで視野を広く持つことができ、豊かな人格形成につながる―。

 究極的には、何かをすることではなく、こども達にとっての出会った人の一人になるということが、つくば学習会のボランティアの役割なのかなと感じます。
少しでもボランティアを考えておられる方には、自分には何もできないかもしれない、偽善者になってしまうかもしれないと考えずに、気軽にこども達に会いに来て頂ければと思います。

◆就職との関連

 私は現在、ある生活協同組合の関連会社で働かせていただいています。
 つくば学習会のように直接こどもと関わることはあまりありませんが、生協の取り組みの中にはこども食堂の支援や、国内外の農産物の生産者が貧困に陥らないようリスクも利益も分かち合う関係性の構築など、広い意味でこどもの貧困の課題解決につながる部分が少なからずあると感じています。
 つくばにいる間に、また時間の融通も利く学生のうちに、つくば学習会のこども達と出会えて直接ふれあうことができて、非常に良かったです。
 つくば学習会のこども達の健やかな成長を、離れた場所からお祈りしています。

  筑波大学 人文・文化学群 人文学類卒
  山口 野の子さん

◆なぜ参加したのか

私は子どものころから教育格差に関心がありました。そのきっかけは私の中学生時代にあります。
 私が通っていた学校は様々な境遇の生徒達が集まる、いわゆる”荒れた中学”で、経済的な理由から進学を諦めてしまったり、勉強したいのにそのような環境・精神状態でいられなかったりする友達を見てきました。

幼いながらに「どうして?」と考えていたのを覚えています。
 私はそんな「勉強したいのにできない」という子どもを減らしたいと思い、教育格差に関する研究とつく学での活動を始めました。

つく学では勉強を教えるだけではなく、勉強以外の部分で子どもたちの暮らす環境をより良いものにしていく取り組みをしています。
子どもたちが健やかに育つための土台作りをしているこの活動に共感を覚えました!

◆参加して感じたこと

この活動に参加して最初に感じたのは「やっぱり子どもたちはかわいいな!」ということでした。
思春期の子や上手く自分の思いを表現できない子など様々な子どもたちがいますが、みんなまっすぐぶつかってきてくれます。一緒にご飯を食べたり、ゲームや体を動かして遊んだり、勉強をしたりする中で、それぞれの個性を伸ばしてくれているように感じ、うれしかったです。

 また私自身学ぶことがたくさんありました。
活動中は「どうしたら子どもたちが安心して学べる環境を作れるだろうか。」と考えるのに必死でした。そして必死に活動しているうちに、教育格差は誰のせいでもなく、複雑な要因が絡まりあってできているものだとわかりました。
 この活動に参加するまでは、教育格差の原因は、子どもたちの周りの大人や学校にあるのではないかと考えていましたが、周りにいる大人も、友達も、先生も懸命にそれぞれが対峙する環境に対処しているのだと今は思います。

 現在、私は通信会社で働いています。複雑化する世の中で教育格差(広く言えば情報格差)を改善するのが私の目標です。問題を誰かのせいにするのではなく、1つ1つ問題解決に向けて愚直に行動していく力は、会社でも役に立っていると感じます。

  筑波大学 大学院卒
  原 理紗さん

◆なぜ参加したのか

私が「格差」を意識したのは、父の転勤に連れられて香港で暮らした小学生のときでした。
 綺麗な高層マンションの眺めの良い広い部屋で住んでいる人と、ゴミの臭いが漂う地域の一角にある狭いアパートに住んでいる人。両者の差は誰の目から見ても明らかだからです。家のアパートの窓から、向かいに住んでいる子どもがいつも一生懸命に勉強しているのを見て、香港の子どもはなんて勉強熱心なのだろうと思っていました。

 高校生大学生になるにつれて、香港の子どもは単に勉強熱心であるだけでなく、香港内の上位5校の大学に進学できるかどうかで将来の生活水準が大きく左右することを知り、そのためにも熱心に勉強していたのだと分かりました。
 香港は格差がある国だとしたら、日本は格差の少ない国だと思っていました。

 学校と家を往復する日々を過ごしていると、貧困を感じることはありません。しかし、現実は異なり、日本の子どもの6人に1人は相対的貧困のなかにあり、不自由なく塾に通ったり進路を決めたりできないことを知りました。
 ただその事を知っても、学生である自分に出来ることはほとんどないと思いました。一方、ボランティアによって自己肯定感を高めてもっとポジティブに生きたいとも考えていました。

つくば市の低所得世帯向けの無料塾がボランティアを募集していることを知り連絡を取ってみると、本当に人手が足りないため、行けるときに参加するだけで即戦力になれるよと言ってもらいました。

◆参加して感じたこと

つくば学習会に来る子ども達は、とても元気で明るく、とても“普通”の子ども達でした。普通の子ども達が、相対的貧困のなかにあり、参考書を買えなかったり塾まで来る交通費を払えなかったり、そういう話を聞くと何とも言えない気持ちになりました。日本の格差は、非常に見えにくい格差だったのです。

私が7月から担当した子は、勉強に対する集中力と熱意、自分で考える力を持っている子でした。
能力も目標もあるのに学習環境に恵まれなかった彼女の話を聞いて、出来る限り力になりたいと思い、教えることに一生懸命になりました。担当した当初、彼女は高卒認定試験の問題がほとんど全く解けませんでしたが、毎日猛勉強をして、11月には高卒認定試験に合格し、1月にはセンター試験と大学受験を受けられるレベルに達しました。
 つくば学習会は、彼女の勉強のモチベーションの歯車として機能していたのだと思います。彼女だけでなく学習会に来る子ども達全員にとって、自分を見てくれる大人がいることに対する安心感こそが、勉強に集中して取り組める環境となっているのだと思いました。反対に私自身は、ボランティアを始める前までは自分に出来ることは少ないと思っていましたが、始めてみると子ども達の成長を通じて確かな貢献感が得られました。現代の日本社会では、このように親と学校の先生以外が子どもと教え教えられる関係を築く機会がとても少ないと思います。地域社会単位での大人と子どもの関わりを増やしていく取組みによって、子ども全体の教育レベルの底上げ、若者や高齢者の自信回復にも繋がっていくことを感じました。

 つくば学習会の今後の課題の1つは、中学生や高校生の進学サポートをより充実させることだと思います。そのためにも、高校・大学受験を経験したボランティアの力は重要です。私の例のようにボランティアを始める動機は何でも構わないのだと思います。学習会にはいろんなタイプの子がいます。自分は何ができるか分からないという方は、足を運んでみて自分の価値観を伝え子ども達の話を聞くだけでも、受け取った側にはなにかプラスに働くはずです。

◆就職との関連

 私は農業協同組合のグループ会社に就職し、農林水産業や地域社会に関する調査研究員として働きます。
 農業は人間が生きるのに不可欠な産業であるのにも関わらず、日本の農業従事者の平均所得は勤労者の平均所得と比較して150万円も少なく、若者の農業離れが進んでいます。これは日本だけでなく世界共通の問題で、世界の貧困層の大部分が農業従事者です。
つくば市の子どもの貧困の問題も世界の農村地域の貧困の問題も、同様に奥の深い複雑な社会的背景があり、課題解決の道筋は険しくみえます。つくば学習会を卒業しても、これからは調査研究の立場から格差構造と向き合っていきたいです。

  日本社会事業大学
  杉 原有紗さん

『つくば学習会に参加して』

 私はこれまで大学で福祉について専門的に学んでおり、授業などを通して社会様々な現状を知り、つくば学習会のような学びの場の必要性を強く感じていました。その中で自分にもできることがあるのではないか、実際に自分も関わることで新たな課題などが見えてくるのではないかと思い参加することを決めました。

 実際に参加してみると、子どもたちはとても元気で、とにかく毎回『楽しい』と感じながら活動していました。もちろん『楽しい』と感じながらも迷う場面もいくつかありました。
子どもたち一人ひとり個性があり、勉強を教えるといっても一人ひとりの事を知り、関係性を築き上げた上でその子に合った関わり方をして行く必要があると思います。関わり方などに迷った時もありましたが、ロベのスタッフの方々や他のコーチの方々のサポートやアドバイスを頂いたりと1人ではなく全員で子どもたちの事を考えて行くことで支援をしていくことができました。

 半年間参加して、子どもたちが安心して学べる場であるためには『楽しい』と感じられる場である必要があると感じました。
それは子ども達だけでなく支援する側の私達も同じように感じられなければそのような場は出来ていかないと考えます。私が毎回『楽しい』と感じられたのにはつくば学習会が子ども達にとって『楽しく安心して学べる場』であるからなのだと思います。
 このつくば学習会にボランティアとして参加した事で自分も成長でき本当に良い経験になりました。私はこの春から就職しこれからも多くの子ども達と関わって行きますが、つくば学習会での経験や学んだ事を生かして行きたいと思います。ありがとうございました。

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~学童保育ボランティアさんの声~

  ボランティアAさん (60代 男性)

◆なぜ参加をしたのか

一昨年たまたま募集の案内を見て参加させていただきました。ボランティアは初めての経験です。

私の場合は仕事の合間にお手伝いさせていただく、という程度の活動しかできません。活動に参加して知ったのは現代日本の子供の貧困が深刻であること、またひと昔前と違う子供たちを取り巻く複雑な社会環境は私の知らない世界でもありました。

わずかな時間しか参加できず心苦しく思っています。それだけに居場所サポートクラブロべさんの活動と、参加しているスタッフの皆様には頭が下がる思いでいっぱいです。

◆参加して感じたこと

 子供たちと一緒に過ごす時間は私にとって、いつの間にか大切なものになっています。最近感じることは、子供たちと接することと子供たちの個性が私の老いていく脳と体に刺激を与えてくれているように思えてなりません。

また、活動に参加して逆に私が教わることも多いような気がしています。物を大切にすること、思いやりの気持ちを持つこと、食べ物をありがたくいただき粗末にしない、などなど・・・。これらは誰もが教わってきたこと、当たり前のことと思っていますがそれらを忘れている人(大人、私も含め)があまりにも多いようです。さらに子を持つ親としても視点を変えて見ることが出来るので、今更ながら自分の子育ては(もう終わってしまいましたが)あれで良かったのだろうか?などと改めて思うこともあります。
これから先、長い人生を歩む子供たち、成長していくほんのひと時ですが大切に見守りたいと考えています。